結論・コタツじゃなくてもアイスはうまい。

 ともあれ、生きているのなら安心できる。カネミツはとりあえず一息ついて、左手で首の後ろを軽く揉む。文字通りの骨折り損はごめんだった。

「じゃが、すでに除籍済みでの。やつがワシリーサにいるのは患者として、じゃ。もう学生ではない」

「……だろうな」

「なーんじゃ、同情せんのか」

「ほぼ落第みたいな状態からあんなことやらかして、それでもここで魔法に関わり続けることができるんなら、最初から落第なんてしねーだろ」

「ぷふっ。……はなまるをやろう」

「おい今笑ったよな? 笑ったよな今!?」

 カネミツの叫びもむなしく、ババ・ヤガーは慣れた手つきでポストのレポートを回収し、投入口に蓋をして走り去る。「あー全校生徒分のレポートを読まなければならんのかー大変じゃのー」という、感情が微塵もこもっていない声まで遠くから聞こえてきた。

 これから研究室に行って、本当に全てのレポートを読むのだろう。ババ・ヤガーはそういう魔法使いだった。新しい世代の魔法使いの、新しい魔法を好む、古き魔法使いだ。

 カネミツは大げさにため息をついて、ひとまずクリアした課題を頭の外へ投げ出した。

 レポートさえ提出してしまえば、〈ババ・ヤガーの小屋〉の一年は終わる。

 あとに待っているのは長い休暇で、一年ぶりの帰郷のために寮の荷物をまとめる必要があった。

 ついさっき駆け抜けた廊下を歩いて引き返し、学舎の外へ。

 空には巨大な頭蓋骨。その中で赤い炎が燃えている。

 オキツグは、当然のように学舎前の広場でカネミツを待っていた。

 スタンドを立てたライジング・フリーに、軽く腰掛けるような姿勢で。