結論・コタツじゃなくてもアイスはうまい。
「間に合ったようだな」
「……なんとかな」
げんなりと答えながら、カネミツは寮に向かって歩きだした。オキツグは一度頷いて、ライジング・フリーのハンドルを握る。スタンドを蹴り上げ、カネミツの隣に並ぶ。
「それでこそ、オレの永遠のライバルだ」
「方向性が違いすぎて好敵手になれねぇだろうよ」
「フ……実際に戦う必要などない。魔法にかける熱量の戦いの話だ」
「さよけ」
完全に決着つかないやつじゃねぇか、とぶつくさ言いながら、カネミツはふと違和感に気づいた。
オキツグが押すライジング・フリーのハンドルに、見慣れない袋がぶら下がっている。
「なぁ、その袋、なに?」
「三十一の顔を持つ氷の女王」
「はい?」
また変なスイッチが入ったのか? といぶかしむカネミツ。
しかし、オキツグが続けた固有名詞には猛烈に聞き覚えがあった。
「サーティーワン」
「アイスに変な二つ名つけてんじゃねぇよ!」
「ちなみにフレーバーはホッピングシャワーが二つと、ジャモカコーヒー、ロッキーロードが一つずつ」
「クソ……完璧だ……完璧に趣味が被ってる……」
魔法にかける情熱量と共に、味覚も似通っている二人であった。
「今日は進級祝いだ、二つやろう。今度おごれよ」
「こないだのハーゲンダッツでチャラだろうが」
「む……そういえばそんなこともあったな」
「忘れてんのかよ! ……ってそうだ、コタツがねぇぞ」
火の玉を出すコタツは、すでに危険物扱いで没収の上、丁重に廃棄されている。