結論・コタツじゃなくてもアイスはうまい。
その間に、カネミツと同じようにギリギリで提出する生徒が二、三人。ババ・ヤガーに野次られながら、レポートをポストに入れていった。
「……で、肉の焼き加減の話じゃったかの? 儂はじっくりミディアムが好きなんじゃが」
「それを聞いた俺は学長をミディアムにすればいいのか? いいんだな?」
「儂のしるべはレアが好きらしいのう」
「ウェルダン通り越して危うく炭になるとこだったっつーの……」
けらけら笑う学長から目を反らし、カネミツは若干遠い目をしてぼやいた。
介入者との戦闘で負った傷は、右腕以外ほとんど完治寸前のところまで来ている。魔法学園〈ババ・ヤガーの小屋〉にいる、薬学系の教員による治療が行われたためだ。
通常ならば三角巾で吊らなければならない右腕が、ギプスだけで済まされているのも魔法によるところが大きい。
「あ、そうそう。例の学生じゃが」
「例の?」
「ランディー・アッテンボロー」
ババ・ヤガーが出した固有名詞に、カネミツは表情を硬くして向き直る。
カネミツとオキツグの同級生であり、噂されていた落第生であり、〈ワシリーサのしるべ〉に介入した事件の発端。
親しかったわけではない。しかし、「介入者」とのケリをつけたあと、〈ワシリーサのしるべ〉で隠された顔が露わになったときは、さすがにカネミツも驚きを隠せなかった。
「生きてるよな?」
「おお。ババ・ヤガーの名にかけて、救える命は救ってみせようぞ。……薬学科の教員が」
「胸を張るな」
しかもドヤ顔だった。