本論三・バカと天才は紙一重だ。
見開いた目が乾きを訴えるのも忘れ、進む道を見定める。奔放に行き先を変える風を手懐け、それこそ風と共に──風となって走る。
機雷原の半ばをすぎる。
オキツグの視界が暗転しかけ、無理にでも呼吸しようとしたところだった。
目の前に並ぶ頭蓋骨たちの向こう、〈ワシリーサのしるべ〉の本体が、深い影を落とした天頂。そこに並んでいた子機たちが、影をより濃くしようとするかのように集まり始めた。
道を塞いだつもりか。歯を噛みしめ、オキツグは〈ワシリーサのしるべ〉を──近づきすぎて後頭部しか見えない巨大な頭蓋骨を睨みつける。
同時、速度を保ったまま後輪を滑らせ、車体を横に倒す。残ったミニチュアたちの下を、スライディングのような姿勢で一息に潜り抜ける。
一部のミニチュアたちが一点に集まったおかげで、その先にはわずかではあるが開けた空間が生じている。
車体を持ち上げ、コーナーのない直線を使って加速。加速。加速。
残った体力をペダルに注ぎ込む。
「っ、ライジング・フリー……システム・シフト……!」
呼吸を求める肺を無視して、オキツグは声を出す。
極度の集中で瞳孔が収縮。黄緑の燐光が尾を引いて流れていく。
「グレイト・ウィング・オブ・グローリー!」
ガラスが砕けるような音と共に、ライジング・フリーの後輪から一対の白翼が生える。
不透明な翼は未完成。まだ魔法として完成していない、開発段階の奥の手だ。
されど、出し惜しみをしている場合ではない。
「その目に焼きつけろ……オレたちの翼を!」
オキツグの叫びと同時、翼が羽ばたく。