本論二・若気の至りにも限度はある。

 魔法使いにも倫理はある。

 オキツグの問いに対し、カネミツは首を振って否定する。

「俺が憧れた魔法銃使いたちは、死ぬ人間を見捨てたりしない」

 旧式ライフルを肩にかけ、カネミツは介入者へ向けて歩きだした。

 魔法使いにも倫理はある。

 己の魔道を裏切らない、という、普遍的とは言えない魔法使いだけの倫理が。

「フッ……そうだな」

 わざとらしく鼻で笑うと、オキツグはババ・ヤガーの指輪を右手薬指にはめる。

 オキツグの魔道は最速への道だ。留まることに抵抗はあっても、前に進むことに迷いはない。

「遅れるなよ、カネミツ。オレが〈ワシリーサのしるべ〉を元に戻せば、アイツはお前の目の前で炙り殺されることになる」

「分かってらぁ」

 カネミツとオキツグはほとんど同時に走り出した。

 それぞれ別の方向へ、自分の魔道が導くままに。

 遠くからそれを認識したらしい介入者が人ならざる声で咆哮したのは、その直後のことだった。