本論二・若気の至りにも限度はある。
魔法使いの歩む魔道は、それぞれ異なっている。
カネミツ・ユウキとオキツグ・キラの魔道が同じでないように。
カネミツ・ユウキとババ・ヤガーの魔道は、決して同一ではない。
魔法は比較するものではない。個人によって究めるものだ。
「安全地帯はそろそろ終わるぞ」
T字路を前に、オキツグが告げる。
カネミツは上空にミニチュアがいないのを確認。ライフルのトリガーガードと一体化したレバーを前に倒して、元の位置に戻す。
初弾装填。
火の象徴たる火薬を詰め込んだ薬莢が、薬室へと送り込まれる。
風を読まずとも、ミニチュアたちの──〈ワシリーサのしるべ〉のとる行動は分かっていた。水平方向での攻撃が叶わず、細く狭い路地を駆け巡る標的をどのようにして仕留めるか。
ライジング・フリーが最後の角を曲がる。
両脇には、相変わらず魔導具商店が並んでいる。正面の道路を駆け抜ければ、ちょっとした草原を挟んだ向こう側に青空を映した地下都市の内壁が見える──はずだった。
魔導具商店街の出口を、白い壁が塞いでいた。
もっと正確に言えば、〈ワシリーサのしるべ〉のミニチュアたちが、ひしめきあって急造のバリゲードを構築していた。
このまま突撃すれば、たとえ「場を整える」魔法を展開していたとしても生身の人間は衝撃に耐えられない。
とはいえ停止することもできない。止まってしまえば最後、方向転換をする隙もなく、上空から火柱が落ちてくることは目に見えている。
「ライジング・フリー、システム・シフト!」
であれば──と、カネミツと同様の思考に至ったのだろう。