本論二・若気の至りにも限度はある。

 高速で移動する標的に対し、上空から垂直に火柱を落とすような攻撃は非効率にすぎるが、周りを見てみればその理由もおのずと知れる。

 魔法のための物品が並ぶ、魔導具商店の数々。

 まだ魔法使いによって象徴付けされていない、ナチュラルな魔力を放つアイテムがそこら中にあふれている。

「まさか、魔導具への影響を避けてるのか?」

「暴走しても、学園都市の防衛機構だということだな」

 それに、と続けつつ、オキツグはハンドル捌きと体重移動で狭い道を駆け抜ける。

 建物の隙間に遠く見えていた、青い空を映す壁が近づいている。

「誰かの魔力介入を受けて暴走状態に陥ったなら、誰のものでもない魔力だろうと積極的に近づこうとはしないだろう。実際、介入への拒絶は表明しているわけだからな」

 介入は許されません──〈ワシリーサのしるべ〉が発した警告が、カネミツの脳裏で繰り返される。

「……やっぱ、そこまでの自律機能は持ってるよなぁ、アレ」

「昼夜の明暗まで事細かに学長が命じているとは考えにくいからな」

 淡々と言うオキツグに対し、聞いているカネミツの表情は渋い。

 どうしても、敵わないと思ってしまう。生きている年数からしても比べものにならないのは確かだが、ババ・ヤガーの魔法は確かに凄まじい。

 巨大な地下都市の維持も、疑似太陽も、防衛機構も、それらの存在を無関係な人間に悟らせない認識妨害も、なにもかもが桁違いだ。悔しいと感じることすらおこがましいと、心のどこかで思ってしまう程に。

 ただし、おこがましいと感じることこそが間違いであると、カネミツ自身も理解している。