本論二・若気の至りにも限度はある。

 そのギャップに追いつけない脳が吐き気によって差異を埋めようとするのを、カネミツは頭を振ってごまかした。

 メインストリートに比べれば幾分狭い道は、不必要なまでに入り組んでいる。店頭に並ぶ魔法関連の商品──怪しげな書籍やパワーストーン、各種植物──も相まって、典型的な「魔法使いの街」という印象を炸裂させていた。

 上空から照準しようとするミニチュアを撃ち落しながら、カネミツが苦言。

「もうちょっと安全運転はできないんですかオキツグさん!」

「曲がるからといって減速などできるはずがない──なぜなら、オレとライジング・フリーは最速を実現するために生まれてきたのだから!」

「お前、将来必要になっても絶対車の免許取るなよ!?」

 時速八〇キロを軽く超えている自転車を駆っているのだから、必要にはならないかもしれないが。

 それはともかく、

「なんでこんな入り組んだ道に入った? 確実に最短ルートじゃないだろうが」

 無秩序に左折と右折を繰り返す道筋は、道幅と傾斜、不意に現れる行き止まりや資材に対応した結果のそれだ。

 オキツグが風を読んで進んでいるとはいえ、手間のかかる道をわざわざ選ぶ道理はない。彼の理屈がそれを受け入れるかどうかは別として。

「オレの右目が導くコースは最短じゃない、『最速』だ。それに、ここを通っている間、〈ワシリーサのしるべ〉は垂直方向からしか攻撃をしてこない」

「あん?」

 ただし、今回ばかりはオキツグにも理があった。

 ミニチュアたちが水平方向の火炎放射を撃ってこない。