本論二・若気の至りにも限度はある。
開かれた頭骨の口へ、旧式ライフルの銃口から飛び出した火球が直撃した。
続けて現れる二つのミニチュアにも、装填行動を挟まずに二発。引き金を引くだけの略式魔法を行使する。
魔法に必要なのは、象徴から発される魔力のみ。
その「引き金」をなににするのかは、魔法使いの個性によって違う。カネミツの魔法銃の場合は、そのまま引き金を魔法発動の合図として利用していた。
火球着弾の衝撃だけで破壊された頭骨たちをかわし、オキツグはさらに加速。絶え間なくペダルを回しながら、さらなる魔法を行使する。
「風はいつだってオレと──いや、オレたちと共にある! 燃え盛る炎を抱えた同胞を迎え入れろ、ライジング・フリー!」
「あのな、魔法に詠唱は必要ないっつうの!」
詠唱──ではなく、「掛け声」と共に、カネミツの体をオキツグの風魔法が支え始める。
不安定極まりない二人乗りを、いわば自動車のシートベルトのような感覚で安定化。これでカネミツは射撃に両手を使えるようになり、オキツグは、
「東方の草原地帯からワシリーサの端、空の壁に向かう」
「いいのか、囲まれるぞ」
「町が壊れるよりはマシだ──舌を噛むなよ、カネミツ!」
言いざま、急激な方向転換。
ほとんど減速しないまま、街路を左折する。
場を整える魔法により、肉体的に振り回されている感覚はなくとも、視覚情報はめぐるましく変化していく。