本論二・若気の至りにも限度はある。

 人差し指は伸ばしたまま、旧式ライフルのグリップに親指を引っかけて腰だめの位置まで持ってくる。中指から小指の三指で、トリガーガードと一体化した楕円形のレバーに突っ込んでグリップを握った。

 カネミツの扱う銃はレバーアクション。その初期モデルであるヘンリー銃を元として、魔法的なアレンジを加えたものだ。

「確かに装填数は一五だが、空撃ちしても炎は出る」

「弾は補助か」

「火薬が入ってる。純粋に火力が上がるだろ?」

「ふっ……そこに小難しい象徴を組み込まない辺り、本当に実戦向けだなカネミツ」

「魔法銃が実戦向けじゃなくてどーすんだよ」

 相手はいねぇけど、という言葉は、極力小さい声で付け足した。

 カネミツの目的は戦いそのものではない。漫画で見た魔法銃を、この手で再現することができればそれでいい。

 その点、〈ワシリーサのしるべ〉は実に最適な「的」だった。動き回る多数の子機を前に、魔法銃がどれだけ対応できるのか。そして、自分はその最適な射手たりえるのか。

 わざとらしい苦笑いを浮かべたオキツグが、自転車の後輪を顎で指す。

「オレとライジング・フリーがお前を運んでやる。存分に撃て」

「おう」

 旧式ライフルを肩に担いで、カネミツはオキツグの後ろへ近づいた。

 心臓が跳ねているような高揚感が、胸の底から湧きあがってくる。試し撃ちや演習ではない、実戦に向かう空気がそうさせるのだろうか。

 原因は定かではないが、自然と浮かんでくる笑みを抑える必要性はどこにもない。