本論一・バカにつける薬はない。

 ひとつの物事に対する熱量の差は、人間関係に大きく関わって来る。「二年も付き合えばこういう行動をとると推測できるようになる」のではない。「こういう行動をとらない人間と二年も付き合っていられない」のだ。

 その結果、学長の気まぐれに乗ってしまったとしても、後悔はない。

 自分の熱量を否定すること以上の後悔にはなりえない。

「本当に、素質があるのう。あとは普段の行動さえ改まれば、文句ないんじゃが」

 抑えきれない笑みを浮かべ、ババ・ヤガーはあっさりと言う。

 応えず、カネミツは振り返ってオキツグに目を向けた。返ってくる隻眼の視線に迷いはない。普段はともかくとして、こういうときには頼りになる相手だった。

「別に、魔法の制限とかはかけないよな?」

「おお。なにかを壊したとかで、反省文を書けとも言わんよ」

「……そうかい」

 からから笑うババ・ヤガーに対し、カネミツはげんなりと返す。この分では、ついさっき書いた反省文も有耶無耶のまま「もう必要ない」と言われそうだった。

「それじゃあ行くか、カネミツ」

 オキツグはすでに自転車を反転させ、右目の包帯に手をかけている。

 もとより、行かない理由はない。ババ・ヤガーの作品たる〈ワシリーサのしるべ〉に真っ向から勝負を挑む機会など、もしかしたらもう二度とないかもしれないのだから。

「ライジング・フリーはすでに、レースへの準備を整えているぞ」

「そういうの、こっちの気が抜けるから本当にやめろよな!」