本論一・バカにつける薬はない。
カネミツは強く言い返せない。そもそも、学長からの直々の特別課題など、学生が軽く断れるようなものではない。反省文を書かなければならない事体を起こしている、という点でも、あまり下手なことは言えなかった。
黙り込んだカネミツに代わり、反論したのはオキツグだった。
「しかし、学長。オレたちはまだ二年だが」
「なぁに謙遜しとるんじゃ。似合わんぞ」
指輪を持っていない方の手をひらひらと振り、ババ・ヤガーは片目をつむった。
ただし、オキツグの言葉には理がある。〈ババ・ヤガーの小屋〉は四年制だ。最初の一年で魔法の基礎を学び、二年目で作る魔法の方向性を定める。カネミツは旧式ライフル、オキツグは自転車という「魔法の媒体」こそ持っているものの、完成しているとは言いにくい。
魔法の完成度を上げていくのは、これから先。現在準備期間中のレポートを提出し、三年に進級してからの話だ。
その仕組みを作ったのは、他でもないババ・ヤガーであるはずなのだが。
「四年など、儂からすれば短いものよ。一年にも四年にも差なんぞない。あるのは魔法使いとしての熱量の差じゃ。それとも、その熱量すら否定するつもりかね?」
挑発するようなババ・ヤガーの言葉に、カネミツは反射的に手を伸ばしていた。
考えて、言われたことを噛み砕く間もなく、いつの間にか手の中に指輪が入っている。そんな気分だった。
けれど、立ち位置が違えばオキツグも同じ行動をとっていただろうと確信してもいる。