X 憎しみの火に焼かれた変容の果て

 五対の視線を浴びながら、十三番は鎌を持つ腕をぶら下げたまま部屋の中に足を踏み入れる。

 白服に動きがあったのは、三歩目を床に下ろしたところだった。

 中央に立つ男が、長い袖を押さえて指を鳴らす。

 合図に応じて口を開く集団は、条件反射に従って動いているだけのようにも見えた。

「〈悪しき敵を払われるのは、神の威光より放たれし炎〉!」

 それでも、同調した集団の意思は奇蹟の発動を可能にする。

 虚空から生じた火炎が、十三番へ放たれる。全てを飲み込み、焼き尽くす圧力とともに迫る炎の壁。

 十三番は一歩も退かずに、持ち上げた鎌の切っ先を正面に向ける。

 胸元に収めた【死神】へ意識を集中。死が象徴する生命活動の「抑圧」を、そのまま燃焼活動へ叩きつける。

 鎌の切っ先が触れた途端、炎の壁は真っ二つに割れた。

 熱風だけが十三番まで到達し、短い髪をかき乱す。肌を炙るような熱に耐え、前へ。炎の壁を突破した先で白服が揺れる。

 まずは厄介な奇蹟を潰す必要があった。白服たちが驚愕に固まっている隙に、合図を出していた中心人物の男へ蹴りを放つ。

 白服の真芯を捉えた足裏から、相手の体が軋むのを感じる。

 蹴り飛ばした男から目を離し、残った白服たちに視線を向ける。周囲で立ちすくむだけの集団は、もはやただの的と言ってもいい。

 鎌を振る手にためらいはない。相手が無抵抗だからといって、斬らない理由にはなりえない。

 無造作に振りあげた刃が、病的な白さを保っていた服を赤く染める。

 致命傷の、しかし即死には至らない軌道で、大鎌の刃は白服たちの体を通過する。

 十三番は相手のいる方へ視線すら向けなかった。悲鳴と呻き、血が床に落ちる音と風を斬る音が混ざる。

 次に鎌を下ろしたときには、周りに立っている者は誰もいなかった。

 最初に蹴り飛ばし、今ようやく起きあがろうとした男へ歩み寄る。

 そのまま胸を踏みつけると、空気の塊を吐き出した喉がいびつな音をたてた。

 十三番は薄く笑み、小さく咳き込んだ。無視し続けてきた脇腹の傷が、じわじわと存在を主張してきている。足元がおぼつかないのは、慣れない魔術を使いすぎたせいか、それとも失血によるものか、判別がつかない。

 構わず、十三番は鎌の刃を持ち上げる。その下で、白服が辛うじて吐いたのは呪いの言葉だった。