失くす
という意味をアルヴィンスは知らなかった。
それは本質的なことかもしれないし、もしかすると表面的なことかもしれない。
だがそれすらも分からないほど、アルヴィンスには何もなかった。
他人より少し力が強かっただけ。
留まる理由がないから長い旅を続けていただけ。
偶然知る機会があったから邪魔な知識があるだけ。
他人がどれだけそれを評しようとも、自己の評価は覆らない。
なぜならもしもアルヴィンスが周囲が評する通りの男ならば、
あの夜に失敗することなどありえなかったのだから。
だからこれは失敗の物語。
ただの愚者であるアルヴィンスが賢者と誤認されていた時代の大昔の物語である。

taskey→『ヴァルハラ・ヴァルフレアA』
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四、衝動

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