五、黒光
蒼衣の位置から、見える。
ぐしゃぐしゃにひしゃげたテントの骨組みの上で横たわる鋼介が。ぴくりとも動かない、義弟の身体が。
フラッシュバックする。
数年前の。任務の。
雪が降りしきる景色。母娘。
「──────」
瞬間、蒼衣は、胸の奥底からこみ上げてくるの感じた。そして同時に、
「──来い! ブラン!!」
自分の手足とも言える機体名を叫んだ。
直後に空に響き渡る甲高い音──動力音。エンジンが出す打ちつけるような鼓動ではない。伸び続ける甲高い絶叫。光の羽が空気を切り裂く時にまき散らす飛行音。
爆風と共に現れる光沢のない白。
傷一つない機体は、スライドしてコクピットを開け広げた。