六、存在意義

【接続を確立】

【神経系のコネクトは問題なく完了しました】

【兵装ユニットのオートメーション機能を、】


 いい。


【マニュアルにしますか?】


 寄越せ。私に。全部を。


【マニュアルモードに移行しました】

【有視界飛行状態です】

【全システム・起動を確認しました。機体ブラン・エフェメラルはこれより、パイロット、ブラン・エフェメラルに主体思考を全任し──漆原蒼衣に全任し──】


 ……ブラン。


【──補助演算に徹します】


 ありがとう。


   *


 夕闇が迫る空を、二つの光が駆け抜ける。

 一つは白。菱形流線形の機体ブラン・エフェメラル。

 もう一つは黒。人型機体オニキス・ライト。

 オニキス・ライトはブラン・エフェメラルの正当後続機シリーズである。有する単騎のスペックは先代の能力を基礎に、大幅に底上げされている。

 しかし、この二機を比べた時、違う点が更にいくつかある。

 その中の一つ。パイロットが持つ感情。

 初代機ブラン・エフェメラルは、パイロットの神経系を直接機体に接続して稼働するため、感情(よけいなもの)は取り払われていた。感情を持たないパイロットの育成を要していた。

 恐怖は動きを鈍らせる。

 喜びは決断力を鈍らせる。

 対する後続機オニキス・ライトは、感情の制御こそなかれ、逆に〈戦闘意欲〉を投薬によって植え付けられているのである。

 戦闘意欲は痛みをねじ伏せる。

 戦闘意欲は恐怖を叩き潰す。

 どちらも非人道的であることは、変わりないが。