四、漆原鋼介
僕は、腕だけでなく、祖母の人生すらも奪ってしまったのです。
それでも祖母は、僕に優しくしてくれます。憎いはずなのに。憎くて憎くて、しかたがないはずなのに。
だから僕は誓ったのです。
守る、と。祖母のこれからは、僕が守るのだと。
その数か月後でした。
僕はいつも通り、廃墟に潜ってジャンク品を漁っていました。その日は少し潜りすぎてしまいまして、地上に戻った時には日も暮れ、空はとっぷりと夜に浸っていました。
流れ星かと思いました。
白く光る何かが空を横切ったのです。でも、途中でそれが星でないことに気付きました。だって、こっちに向かってきているのですから。僕は全力で横に跳びました。ぎりぎりだったと思います。遅れて到来した烈風に巻き込まれ、僕は砂丘を転がりました。
平衡感覚を取り戻すのに少し時間がかかりましたが、僕は、砂漠につっこんだ物の正体を確かめるために、すぐに現場に向かいました。
砂漠につっこんだ物がもしも敵国の機械だったりしたら、事ですから。
でも、結果的には違ったのです。
墜落現場を見るとそこには菱形流線形の白い何かが電光をまき散らしながらその機体を横たえているではありませんか。さらにその機体の一部がスライドしていて、乗り込んでいた人が外に投げ出されていました。
そのとき僕は、目を疑いました。
だってそこに横たわっている人は、よく似ていたのです。大好きだった姉の顔によく似ていたのです。
僕は、戦争で父と母と、大好きだった姉を失いました。