02.マドンナの秘密

 サイラスは銃をホルスターに収め、足元のキースに目を向ける。

「生きてるか?」

「……なんとか」

 去っていくローター音に安心したせいか、脳内麻薬の影響で麻痺していた痛みがキースに戻ってきた。引きつる頬を無視して金庫へ向かい、重い扉を開く。

 中に収まっていた書類は、折って上着の内ポケットへ。その間に、ローザはあらかじめ用意しておいたワイヤーを、室内に固定してから割れた窓から落としていた。

 サイラスが放り投げた猟銃を広い、キースが立ちあがったところで、ローザは腰のベルトにフックを取り付けてワイヤーを通した。

 悲惨な状態になった部屋を見まわして、肩をすくめる。

「社長室がこんな状況じゃあ、証拠なんて盗まなくてもよかったかもしれないわね」

 キースは苦笑しか返せなかった。