01.ブラッディ・ダイヤモンド

 最初から単なる確認のつもりだったのか、ローザは特に気分を害した様子もなく身をひるがえす。コレクションルーム内の唯一の窓へと近づき、木枠に手をかけた。

 狭苦しい街の中では、窓の外に見えるのも隣家程度のものだ。しかし、ローザの視線は目の前のレンガ壁を通り過ぎ、その向こうにある乱立した摩天楼を捉えている。

「全ては無理かもしれないけれど、払える悪があるなら払ってあげないとね」

 ちょうどその方向に、貿易会社マドンナの本社ビルが建っていた。