第1章
目を伏せる。実包についた赤い石に、どうしても視線が吸い込まれてしまう。
欲望が頭をもたげた。ヒトの形をしたケダモノを、届かないと思っていた存在を、殺せる。
しかし同時に、記憶の奥底に植えつけられた恐怖心が拒絶する。もう二度と、あれと関わりたくはない。たとえ思い出すだけであったとしても、直接会うわけでなくとも、近づくこと自体に意識が警鐘を鳴らしている。
頭も体も固まってしまった僕に、ヴァージルはあっさりとした口調で続けた。
「答えは今すぐでなくても結構です。魔法弾の準備が完了するか、魔法弾を見ることすら嫌になった場合はこちらへ連絡を。──弾は、渡しておきますので」