序論・コタツでアイスはテッパンだ。

「被告人。そのアイスは誰のものだ」

「食ったからオレのものになった」

「食う前は誰のものだった」

「ふっ……あいにく、過去は振り返らない主義でな」

「んなこと言ってもカッコよくねぇからな! 他人の名前書いてあるアイスのゴミ前にしてそんなこと言ってもカッコよくはねぇからな!!」

 雪の降りしきる冬の日のことだった。

 備え付けの洋風家具の中、異彩を放つ純和風家具「コタツ」に足をつっこみ、向かい合って座る少年二人の間には妙に険悪な雰囲気がただよっているようで、実際にはいつも通りのやりとりだった。

 二人の間、コタツの天板に載せられたのは、掌サイズのアイスのカップ。

 もちろん中身はなく、フタには黒マジックで書いたと思しき「カネミツ」の文字が。

 何食わぬ顔でステンレスのスプーンをくわえている少年・オキツグは、

「そもそもカネミツにハーゲンダッツなんて似合わないだろ」

 完璧に開き直っていた。反省の色は微塵もない。

 確かに、室内であっても首にさげたイヤーマフ──射撃時に銃声から耳を守るための耳当て──を外さないカネミツに、高級が売りのアイスは似合わないかもしれない。髪の毛も安っぽい茶色に染められ、眉毛の黒が目立っているのも考え物だ。

 しかし、オキツグ自身もハーゲンダッツが似合う見た目とは言えなかった。肩まで届きそうな黒髪の隙間から、右目を覆う白い包帯が見える。怪我をした、などという理由からではなく、一部中学生が意味もなく手首に包帯を巻いてしまうのと同じ症状である。

 ようは、

「お前みたいな厨二病こじらせたヤツに言われたくはねぇなぁ!」