本論二・若気の至りにも限度はある。

 そして、介入者がクレーター付近にいるのだとしたら、〈ワシリーサのしるべ〉の挙動がおかしいことにも説明がつく。他者からの介入を受けた結果、持ち主のいない魔導具にすら介入を避けようとしているのだから、その原因に近づこうとしないのも頷ける。

 なにより、〈ワシリーサのしるべ〉に異変が起こる前。オキツグは介入者を指して言っていた──「悪意の純度が低すぎる」。

「オレ自身がかつて言ったことを否定するのは心苦しいが、訂正する。アイツが持っているのは悪意という程のものでもない。八つ当たりする子供みたいな薄い感情だ」

 クレーターから反らさないまま、オキツグは目を細めた。

 ひとまずカネミツは怒りを収め、問う。

「で、それが停まる理由になんのか?」

 異変が起こってから現在に至るまで、介入者は動いていない。

 遠く、上空に見える〈ワシリーサのしるべ〉に直接触れないまでも、近くまで行ったことは確実だ。ということは、介入後、彼あるいは彼女はその高さから地面に叩きつけられたということになる。

「死んでるんだろ、アイツ」

「いや、息がある」

「……はい?」

 そんなバカな、とカネミツはもう一度クレーターに目を向けた。

 姿こそ見えないものの、地面がめくれあがるほどの衝撃が、人体を破壊しないはずもない。

「あれで?」

「他人の魔法を奪おうとしたやつがどうなるか、知っているか?」

 オキツグはクレーターに向けていた指を下ろし、続ける。