本論一・バカにつける薬はない。
カネミツたちの在籍する魔法学園〈ババ・ヤガーの小屋〉は、魔法開発に特化した教育が最大の売りである。無論、地下都市であるにも関わらず地上と遜色ない生活をおくれることや、魔法使いのみが暮らす閉鎖空間という安心感だけでも魅力的であるものの、それらは学園都市としての本分ではない。
──自ら魔法を創造し、行使するものこそ、魔法使いと呼ばれるべきである。
創設者であり、現学長、さらには地下都市・ワシリーサを創造、維持している大いなる魔女の言葉を元に、〈ババ・ヤガーの小屋〉は成り立っている。
カネミツ自身、その教育方針に惹かれてわざわざロシアの地へ渡ったクチだ。同じ情熱を持っていない人間がいるなどと、本当は信じたくもない。
「まぁ……なにも考えずに入ってくるやつもいるってことか」
「進路相談もバカにできんな」
「いや、フツーの学校の進路相談で魔法学園とか言ったやつはお前しかいないと思うが」
「ふ。お前の世界は狭いな」
「そんな無駄な広さはいらねぇ!」
そもそも魔法学園に対応した進路相談ができる場所は存在しないのだが、それはともかく。
〈ババ・ヤガーの小屋〉が抱える問題のひとつに、その特異な教育理念に対する一部学生の無理解というものは確かに含まれている。「どれだけうまく魔法を使えるか」ではなく、「どんなことに、どうやって魔法を使っていくか」が評価の基準となってくるからだ。
他人が作った魔法をまねるのと自ら魔法を考案するのとでは、必要な能力と心構えが違う。
「つーか、そんなことはどうでもいいんだよ」