第一章

 やはり祖母の知り合いだったのか、祖母が出かけてるのを見たことがなかったが、この喫茶店に通っていたのか。

「お前の婆さんは、もう二度とあの家には帰らない。そうゆう、契約だからな」

「何を言って……」

「お前の婆さんはな、神になったんだ」

 馬鹿らしい、何かの宗教だろうかわけがわからない。創のニヤニヤした顔が、むかつく。人が神になれるわけがない。

「まぁ、聞けよ。お前は婆さんの声を聞いたことないだろ? 婆さんは特別な力があった。『言霊』って知ってるか? 言葉にも魂が宿るんだよ。何かをしたい、誰かが憎い、そう言葉にするだけで形になったりするんだ。まぁ、大抵は微弱すぎて形に生る前に消えたり、思った形とは別のものになったりな」

 言いたいことはわかる気はするが、でもそれはおとぎ話だ。

「お前の婆さんはな、言霊を使えたんだ。それはすごい力だ、願って発すれば全て叶う! だがお前の婆さんはその力をあまり使って生きてこなかった。そこが神に認められた」

「馬鹿馬鹿しい」

 自分の口を慌てて閉じる。本音が漏れてしまった。こいつの話は私を馬鹿にしてるだけではなく、祖母をも馬鹿にしている。

「まぁ聞けよ、神に死はないが、神ってのは消えるんだ。信じられてないと消えるそうゆう、脆い存在だったりするんだ。婆さんは『言代主神』になった。神と一つ約束をして自分も神になることを承諾したんだ」

「その約束って?」