第一章

 不思議な雰囲気のその喫茶店に、吸い込まれるように入店した。店内はレトロな洋風の喫茶店でカウンターにはカップを磨くがたいいい、坊主の厳つい男性が立っていた。

 カウンターに座ると無言でメニューを出してくれる。こうゆう雰囲気に憧れていた私は、喜んでメニューを受け取る。

「田多良、そいつにメニューはいらない また、不思議な姉ちゃんが着ちまったな」

 奥のテーブル席から浴衣の男がでてくる。ボサボサの髪、寝ていたのか頬に跡がある。

「姉ちゃんは人間か? それとももう、なっちまってんのか?」

 わけのわからないことを言う人だ、まだ寝ぼけているのだろうか。

「……自分がなんなのかわからない類が?」

「私は園原 美咲、人間です」

「園原??」

 名前を名乗ったらわけのわからない男性が何か考え込んでしまう。関わらないほうが賢明だと分かった私は用事を済ませて帰ることにする。

「この本、祖母の部屋で見つけまして中にここの喫茶店の地図が挟まっていたのでこちらの本じゃないかと思いまして」

 カウンターの男性に本を差し出したら、横から本が取り上げられる。取り上げた男の方に目をやるとニヤニヤしながら本をペラペラめくっている。

「自己紹介をしといてやろう。村田 創だ お前はこれから俺の力が必要になるだろう、まぁ、助けてやる」

 なんなのだろう、新手のナンパか何かだろうか。

「そう警戒すんな、力が必要ないならないでいいんだ俺としても、それなら婆さんとのもう一つの約束を果たして終わりだ」