第一章

 そう呟いたのが聞こえた。そこから私は意識をなくしていたらしく後から来た母達に、庭で倒れているのを発見された。今になって考えて見れば、声が枯れるくらい大声を出していたのに、近所の方々がやってこなかったのも何かが起こっていたからなんだろう。その何かは分からないがその日から祖母の姿を見た人はいない。


 私はその日から不思議な現象に悩まされる日々を送っている。

 度々、この世の者じゃない奴らに話かけられる。最近合ったのは、鼻の長い赤面のお爺さんに道を尋ねられ、気にせず教えると「つまらん」と背中から黒い翼を生やし飛んでいった。

 どうやら私は、この世の者じゃない奴らを惹きつけてしまう体質になってしまったらしい。


 祖母が居なくなってしまってからも私は、祖母の家に遊びにいく。この古い家が私を呼んでいる気がするのだ。最初は反対されていたがもう慣れたのか、祖母の家に行くと言うと掃除をついでに頼まれる。最近じゃ日課になってしまった。


 この家で一番好きな場所は祖母の部屋で、まだ16年間しか生きてない私でも懐かしい感じがするのだ。

 祖母の部屋には、本がたくさん置いてある。本棚などはなく、無造作に積まれているのだ。今日はカラーボックスを持って来たのでこの本をしまう予定にしている。

 本を黙々と収納していたら、一枚のメモが落ちてきた。広げてみると近くの喫茶店への地図だ。商店街の通りを一本裏手にいくとこの喫茶店があるらしい。この本はもしかしたら喫茶店の方の本なのかもしれない。


 商店街を一本裏手に外れただけなのに、随分と静かな場所にその喫茶店はあった。