目が覚めたら
とりあえず誰かに事情を聞こうと部屋を出るためドアに近付く。
高めの位置にあるドアノブを見て少しげんなりしてしまう。
ベッドといい、台座といい、極め付けはドアノブだ。
成人男性の俺が大きい、高いと感じる作りはなんの意図があるのだろうか。
届かないわけでもないので閉じ込める意図ではないとしてもだ。
机と椅子はサイズが丁度よさそうなのに。
ドアノブに手を伸ばしたところで違和感を覚える。
自分の手が綺麗なのだ。
デジタルな世の中なのに、あり得ないくらいのアナログな事務作業でできたペンダコがなくなっている。
手を見ると、可愛らしい小さな手になっていた。
手入れなどせず荒れていた肌にはツヤとハリがある。
自分の手じゃない。
だが指は思った通りに動く、意味もなく手で狐の形を作り自分の手だと言うことを確認する。鏡、鏡はないのだろうか。
今の姿を確認したい、冴えない成年の異名を持っていた、慣れ親しんだ自分の姿を。
鏡が見当たらないので、テラスへと続くガラス戸に近づく。
ガラス戸には、子供が写っている。
反射してる窓からわかるのは、髪の色と整った顔立ち。
髪は綺麗な金髪で、顔はあどけなさが残る少年だ。
子供になってる。
誰だ、この窓に写ってるのは。
皮肉にも、動揺すればするほど、窓に写っている少年も顔が強張っていく。
まるで俺の心情を現してくれるかのように。
頬をつねると痛みがくる。
これが夢じゃないとわかると同時に窓に写っている少年が今の自分の姿だと確信する。
少年も頬をつねったのだ。俺がした行動を少年はする。
どうなっているのだろう。