目が覚めたら
目が覚めると、いつもの部屋ではない場所で寝ていたことに気づいた。
いつもなら、目を開けたら見える薄汚れた木目の天井も、隣に建ったマンションのせいで日差しが入ってこない窓も布団から手を出せばすぐに触れられるザラザラしたフローリングも。
今、寝ていた場所にはなかった。
目を開けたら見えるのは、テレビなどで見たことがある、洋風の家でよく見る綺麗な白い天井、ガラス戸からは月の光が入り込み、ある程度部屋を明るくする。
手を出せば触れられていたフローリングの感触もなく、出した手は空を切る。 3980円の安い敷き布団で寝ていたはずなんだが、ふかふかのベッドに寝かされている。
身体を起こして部屋を見渡す、見慣れないものばかりだ。
昨日は残業が終わり、明日も早いから寄り道もせずまっすぐに家に帰り、上着を脱いだだけでそのまま布団に倒れこんだはずだ。
どうなってるんだ?
とりあえずベッドから降りる、脚が高いベッドなのか、大人の俺が足を床につけるのに苦労した。ベッドの淵に座るだけじゃ足がつかなかった。
足から伝わる感覚はフカフカの絨毯だ。
チリ一つないのだろう、ザラザラとした、いつものフローリングの部屋で味わう感覚は一向にこない。部屋を物色する、家具はあまりない。
机と椅子、あとは、部屋の真ん中にあるよくわからない大きな石。 台座に乗せられ飾られている、オブジェだろうか。