第四章
たとえば、その情報を知ることが、彼にも可能だとわかっていたら。
通常、ナイトハンターが人に目撃されるには、ある一定の条件をクリアしなければならない。ナイトハンター自身が、自ら、能動的に、人に触れる。その状態であれば、たとえ霊感がなかろうと、魂だけの存在を視覚できない体質であろうと、人はナイトハンターの存在を見ることができるようになる。
だから、ナイトハンターが気をつければ、彼らが人に見つかることはほとんどない。その性質を理解した上で、わざと人に目撃された可能性がある。
浮かび上がる仮定。否定する材料はない。むしろ、見落としている部分の方が多いのではないか。包帯の奥で、噛み締めた歯が軋む。
事実、掲示板にも書いてあったはずだ──『確か前にも目撃されてた場所だったな』と。つまり、他のナイトハンターが、具体的に言えば地面に横たわる熊の姿をしたナイトハンターが、すでに縄張りとしていた場所だった。そう考えられる。
ならば、ナイトダイバーをこの場におびき寄せた理由は。
ただナイトダイバーと会うための罠だったのなら、もう姿を現してもいいはずだ。姿を隠す必要もない。
それ以外に、理由を見出すとすれば。
「──優、菜?」
ぽつり、と口を出た言葉を、ナイトダイバーの思考は即座に否定する。
ありえない──だが、それを確信させる要素はこれといってなかった。推測というよりも願望に近い。予感と予測は嫌な方向へと向かっていく。