Code5:JOKER
「お、おきゅ……遅れて申し訳ありませんでした! ドゥーヴァパイロット、ノーネームでしっ! …………スミマセン……」
声がしぼむと同時に縮こまるような姿勢になる闖入者(強制)改めノーネーム。
唐突かつ予想外なファーストコンタクトに理解が追いつかない。言葉のひとつひとつをかみ砕き、さらに作戦中のやりとりを思い出そうとするブラッドだったが、ノーネームを名乗る二者に共通点は──
「……嘘、なんだろ?」
「本当ですスミマセン」
──ない。
よくよく思い出してみれば声は似ている。のだが、硬く平坦な口調のノーネーム(パイロット)と、噛んでは謝るノーネーム(闖入者)では他者に与える印象に違いがありすぎる。同一人物であるとすれば、闖入者のノーネームが本質であり、パイロットとしてのノーネームは「過度の緊張の表れ」だと理由づけできないこともないのだが、それにしてはかなり大胆な言動をしていたようにも思えてくる。
「だってお前……ペッシャールから逃げられるとかすごい自信ありげに……」
「に……逃げたかった、んです、スミマセン」
「なぜ謝ル」
「スミマセ……ひぃっ」
チャンを見たノーネームが──おそらくは火傷痕に驚いて──情けない悲鳴をあげた。
直後、自分のしたことに気づいて謝罪を連発するのだが、逆効果。チャンは嫌そうな顔でノーネームを見下ろして、しばらくしてからブラッドに視線を向ける。
「おイ、どうにかしロ」
「……残念だが、俺にはなにもできない」
「分かっタ、女と親しげだったことも含めて爆破すル」
「よく分からない私怨みたいなのが含まれてるなぁオイ!」