Code5:JOKER

 『波の乙女計画』に属するパイロットであれば一度は死にかけたことのあるものばかりだし、同時に他人の死を目撃しているものも多い。それに伴って、命に対する思考と考察には個人的に時間をかけているものがほとんどなはずなのだ。

 いつだれがどこで死ぬのか。そんなことは分からない。だからこそ、その場でできることをした──と言われれば返す言葉もないのだが、まさか空中格闘戦に特化したペッシャールを相手にして、火力特化二機・隠密特化一機の組み合わせで応戦するとは。

 と、クレイグが思考しているところで、司令室の扉が開いた。

 ほとんどタイムラグを挟まずに投げ込まれたのは、濃い茶髪の青年だった。

 ちょうどブラッドとチャンの間に「べちゃり」と着地した闖入者(強制)が一斉に注目をあびる。気弱そうなたれ目と筋肉がほとんどないように見える細身の体に、空色の軍服が全く似合っていない。

「失礼します……失礼しました! 相変わらず迷っていたので配達させていただきましたので私はこれにて退散します。管理が至らず申し訳ありませんでしたっ」

 青年を投げ込んだと思しき人物の声は、女のものだった。たたみかけるような早口でも聞きとりやすい。

 呆気にとられるブラッドとチャンを置き去りに、クレイグと「運び屋」が言葉を交わす。

「……いつもご苦労」

「ありがとうございます。失礼します」

 いつも? と首をかしげるブラッドがどうするべきか迷っていると、物のような扱いを受けていた青年が慌てた様子で立ちあがった。

 そして、名乗る。