Code4:PECHEUR

「コールガ、同調(リンク)しろ」


   コマンドを確認_
   全権限を放棄_
   補助モードに移行_
   これより、リンク・モードに移行します_


 電子音声の直後、強烈な閃光がブラッドの視界を襲った。

 しかしそれも一瞬。大量の情報が脳に直接叩き込まれたため、急増した視覚情報を処理しきれずに視界がホワイトアウトしただけで、すぐさまコールガのフォローが入る。

 視界は明瞭。コールガに搭載されたカメラから見る景色は、モニタ越しに敵を狙うことに慣れてしまったブラッドにとっては新鮮なものだった。

 風の流れがわかる。湿度がわかる。分離したコールガのパーツの位置がわかる。次に行う行動の結果も、その影響も、その先に相手がどのような行動をとってくるのかも。

 操縦桿を握る必要などない。頭で命じれば、コールガの本体も、ヒレをかたどるパーツのひとつひとつも自在に動く。

 ──ペッシャールを追える。

 ただ、ブラッドはAIと同調するための調整を施されているわけではない。魔力を消費して意識をAIにねじこんでいるだけで、肉体的にも精神的にも疲労が激しいというリスクを負っている。おおよそ、実用化に耐えるような技術ではない。長時間の使用ももちろんできない。

 しかし、そうでもしなければペッシャールを超えられないのもまた事実。

 短期決戦。ブラッドに残されているのは、この道だけだ。

 コールガを操り、加速。本体とヒレの間に生じるラグを可能な限り縮め、イワシの群体のように攻撃をかいくぐる。ペッシャールの背後を狙う。