Code4:PECHEUR
重力に逆らうことが、その答えじゃない。
コールガに乗ることが、その答えじゃない。
それは単なる手段に過ぎない。
「……わかった」
ペッシャールと背後をとりあう戦闘機動を続けながら、ブラッドは言う。
「コールガと同調(リンク)してペッシャールを抑える。その間にチャンは任務を遂行してくれ」
『何を……!』
「アビゲイル。俺は守られるために生き延びたわけじゃない。自由に飛べないなら計画を降りるし、その結果、口封じだかで殺されても構わない。そんなことも思い出せなくなっちまったくらいにビビってたってのは認めるが……ビビったまま殺される気は微塵もない」
失いかけていた闘争心が煽られる。
数分前の自分と、二年前の自分に。ぐるぐると尻尾を追いあうペッシャールに。
『……陽動を、続ける。ペッシャールの脅威が残ったまま、撤退するわけにはいかない』
『準備はできていル。好きなときにブちかまセ』
ノーネームとチャンの返答が、ブラッドの背を押す。
数秒の沈黙ののち、アビゲイルは小さくため息をはいた。
『可能な限りのサポートをします。──幸運を』
──賛同は得られた。
もう、逃げることは許されない。逃げるという発想に至れるほど、煽られた闘争心の炎はおとなしくはない。
極度の緊張にさらされたせいか、ブラッドの口元には自然と笑みが浮かんでいた。抑えることもできずに、口はひきつった弧をえがく。
落ち着け、と自らを律することもなく、ブラッドはコマンドを叩きこむ。