Code3:LEVIATHAN

 つい最近もこんな状況になったような気がしたが、努めて無視。

 追い打ちをかけるように──本人のその気はないだろうが──アビゲイルは容赦なく告げる。

『現場の状況を確認するのはいいんですが……予定通りにいけば、その現場にあと一〇分で到着します。無駄話は終わりにしますよ』

「りょーかい、周囲警戒を続けますよっと」

 雲の上を飛んでいるコールガから見える景色は、一〇分程度で変わるはずもない。

 存在感を増すばかりのフラストレーションに、ブラッドはひそかにため息をついた。


   *


 戦場は、すでに混沌としていた。

 ブラッドはいまだその現場を直接見ていないが、戦場の異様さを知るにはレーダーからの情報だけで充分だった。

 戦艦と思しき大きな反応は五つ。その内、一際大きいものが今回の標的であるレヴィアタンだろう。何かを警戒するように、隊列を組んだ状態で可能な限りの速さを保ち、一定の海域を動き回っているのが確認できる。

 時折現れる六つめの反応が、『波の乙女計画』の隠密特化機体、ドゥーヴァのものと思われた。閃光のように現れては消える反応に、数秒遅れて対空ミサイルが放たれる。それから一〇秒もしない内に、見当違いの場所に六つめの反応が現れる。遅れて、ミサイル発射。一〇秒後、虚空から放たれた一撃が、レヴィアタンに命中。ミサイル発射。一〇秒後、何事もなかったかのように反応が現れ、消える──

 百戦錬磨のはずのレヴィアタンとその護衛艦は、完全に翻弄されていた。翻弄されるしかないほどに、ドゥーヴァのステルスは完璧だった。