Code3:LEVIATHAN
一度アビゲイルの言葉が切れ、キーボードの打鍵音が聞こえてくる。
『ステルス特化の機体、ドゥーヴァ。今回、敵座標が細かく指定されたのは、ドゥーヴァがレヴィアタンに貼りついているからです』
「へぇ……もうそいつは撤退してんのか?」
『いえ。後続機が到着するまで貼りつくか、あるいは到着後も陽動役の任につくことが多いです。今回は陽動役をするようですが──』
打鍵音が止まった。
わずかな沈黙ののち、アビゲイルが言葉を継ぐ。
『兵装は無音レールガンのみ。パイロットも元・民間人なので、それだけは意識しておいてください』
「……死にかけたことのある空軍兵ってのは、そんなに少ないもんなのかね……」
『死にかけたことがあるからといって、誰でも魔力を持てるわけではありませんからね。死の淵を長くさまよっていれば魔力の量も多くなりますし、逆に少ない人だってたくさんいるんです。仕方ありません』
坦々と述べるアビゲイルの口調はいつも通りだったが、わずかな違和感がブラッドの意識にひっかかった。
言ってはなんだが──アビゲイルにしては感情的すぎるという印象を、ブラッドは抱く。触れてはいけない部分に触れたのだろうか。もしそうだったとしても後の祭りではあるのだが。
ブラッドの視線に、索敵時とは比べ物にならないほどの緊張感が混じる。
「もしかして、アビゲイルもそういう境遇だったり……」
『私は軍学校の通信科卒です。死にかけたことはありません』
「……あ、そう」
しかし、的外れ。肩すかしを食らったかたちになったブラッドは、頬をかいて視線をさまよわせる。