Code3:LEVIATHAN

「……なぁ、このコックピットってカメラついてんのか? 俺のこと見てるだろ」

『安心してください。そんなものはありません。……というか、今まさに言おうとしてたんですか? 緊張感というものはないんですか?』

「俺の緊張感とか集中力はスタミナねぇの。短期集中型なの。本番に備えてんの」

『便利な言い訳ですね』

 単刀直入な切り返しに、今度こそ閉口。口喧嘩というか、口論というか、他人を言いくるめることが得意なオペレーターに、ブラッドが勝てる道理はないのだが、いつも同じパターンだなと思わないこともない。

 ふてくされつつ、ブラッドはコールガに指示してレーダーからの情報を表示する。次いで、ステルス性の高いラ・モールに対応するためにモニタを全面表示。

 シートにもたれかかりながらも視線を走らせる。──のだが、緊張感のかけらもない暇つぶしのような索敵だった。

 その暇つぶしも、ブラッドにとっては苦痛でしかない。視界に入るのは蒼穹と白雲の帯。それらのことは嫌いではないのだが、見ている内に「飛びたい」という欲求がふつふつとわきあがってくる。

 オートパイロットモードのような無粋な方法ではなく、自分の意志で操って、自由に飛びたくなってくるのだ。

 ──意識を反らそう。

 ブラッドの思考がその結論に至るまでに、さほど時間はかからなかった。

「なぁ、アビゲイル」

『なんですか?』

「今回の作戦、参加するのは二機だけか? レヴィアタン相手に」

『火力として計算されているのは二機ですが、もう一機、先行してレヴィアタンに接近している機体があります』