Code3:LEVIATHAN
『──あー、こちラ、モン・チャン。音声は良好カ?』
別機体の接近に反応して、コックピット内の右側面モニタが起動。並走するブローズグハッダを映す。
どうやらブローズグハッダはハリセンボン型のようだった。といっても、「ハリセンボン」と聞いてすぐに思い浮かぶような体を膨らませた状態ではなく、あまりなじみのない「しぼんだ」姿で飛行している。小刻みに胸ビレを動かす姿からは、顔に火傷痕のある異国人パイロットを想起しにくい。
とまどいを隠してブラッドは返答。
「こちら、ブラッド・ベイリー。感度良好。……あー、モン、でいいのか?」
『そっちはファミリーネームダ。チャンでいイ』
「オーケー。俺はブラッドでいい。今回はよろしく頼む」
『……了解。いつでも出発してくレ』
会話終了。同時に、チャンの操作で無線通信は切断された。
無駄な雑談は好まないのかもしれない、と予想しながら、ブラッドはコールガをオートパイロットモードに移行する。指示された座標を口頭で入力すると、コールガはゆっくりと加速し、前進。
側面モニタが消え、真後ろの背面モニタが点灯。追従するブローズグハッダと、雲の帯にもぐりこんでいくヒミングレーヴァが映る。
しばらくは景色に変化がない。よほど運が悪くなければ、状況にも変化は起きないだろう。敵機発見が遅れなければ、異常事態も大抵は回避できる。
ブラッドの口が開き、
『暇だ、とでも言うつもりですか?』
冷やかなアビゲイルの言葉に閉口しかける。
すんでのところで踏みとどまり、ブラッドはコックピット内を見まわした。