Code3:LEVIATHAN
コールガ起動_
反重力フィールドを展開_
通常モードにて飛行を開始します_
電子音声が定型文を読み上げてから一拍おいて、ブラッドの体は軽くコックピットに押し付けられた。
コールガに限らず、反重力機能を搭載しているシリーズ・エーギルの離陸は、従来の飛行機やヘリコプターと比べてずっと滑らかだ。飛行機のようなジェットエンジンも、ヘリコプターのようなローターも使わない飛行は、乗り手や部品のストレスにもなりうる振動や騒音を大きくカットする。
その代償として、反重力機能が不調をきたせば墜落するというリスクを背負わなければならないのだが、そもそも『波の乙女計画』はプロトタイプである。ブラッド自身、安定性など最初から求めていない。本来ならば、いきなり実戦投入などせずに自国内でテストフライトを重ねるべき機体なのだから。
『今回はブローズグハッダと共に行動することになります。コールガの役割は護衛ですので、先行して周囲を警戒してください』
「了解」
オペレーター・アビゲイルの平坦な指示が飛ぶ。
返答したのち、ブラッドは操縦桿を操って前進。出撃用のスペースに移動していたコールガは、前方に大きく開いたゲートからヒミングレーヴァの外へ出る。
モニタに蒼穹が映し出された。眼下には白い雲の帯が。頭上には昇っている途中の太陽が輝いている。
視界を阻むものは何もない。雲の上はいつだって快晴だ。
と、周囲に目を向けていると、無線機からわずかなノイズが。続けて、特徴的なイントネーションで素っ気ない言葉がかけられる。