Code2:HIMINGLAEVA
ブラッドが目を見開いている間に、男は素っ気なく視線を反らしてしまった。ブラッドの反応を不快に感じた、というよりは、最初から興味など持っていなかった、という印象。現に、男の黒瞳はなんの感情も映さずに虚空へ向いている。
「──それでは、本題に入ろうか」
両者の視線が交わったのを確認したのか、クレイグは椅子の背もたれに寄りかかりながら話を切り出した。
自然とブラッドの背筋が伸びる。思考を切り替える。
「ブローズグハッダパイロット、モン・チャン。コールガパイロット、ブラッド・ベイリー。以上二名には明日、帝国の戦艦・レヴィアタンの撃沈任務に就いてもらう」
「レヴィアタン……って、帝国のジョーカーとか言われてた、あの?」
「そのレヴィアタンで間違いない」
ブラッドの問いに答え、クレイグはデスクに埋め込まれたパネルを操作する。
呼び出されたデータは司令室中央のホログラム投影機で展開され、極細の光が戦艦の像を作り出した。
鉛色が剥き出しのままの姿は、水棲生物をモデルとしたシリーズ・エーギルよりもよほど兵器らしい。船首上部は水を切るために鋭く、水中に沈む下部はソナーを内蔵した球状の突起が突き出ている。
水面上の船体上部には、中央から前に伸びる二本の主砲。その下には一回り小さい副砲が備えつけられていて、左右を囲むように対空ミサイルの発射ポッドが並んでいる。
超弩級戦艦にカテゴリされるレヴィアタンの主砲は五十二口径。他、全長や幅といった数値で示されるデータは投影されたウィンドウに収まっているが、文字通りミニチュアサイズと化した戦艦を見ても実感が湧かない。