Code2:HIMINGLAEVA

「全長二二〇メートル、幅三二メートル……などと言うよりは、こうした方が分かりやすいかな」

 ブラッドの心中を察したように、クレイグが言う。同時、端末の操作に従って投影機がもう一つの像を結んだ。

 漆黒の亜音速機──ラ・モール。公国空軍に所属していれば一度は見ると言われている、最高の汎用性を有する帝国機が、レヴィアタンの隣に並ぶ。

 たったそれだけで、『全長二二〇メートル』という数値にリアリティが増した。コックピットから見つめ続け、追い続けてきた敵機の大きさは、下手をすると頻繁に変化する自機よりも分かりやすい。

「いい標的に見えるか?」

「……当てやすそうではありますね」

 しかして、二二〇メートルの巨体に対し、ブラッドが感じたのは畏怖ではない。言葉を選んではいるものの、その口調に恐怖の感情は含まれていない。

 ──レヴィアタンは、帝国のジョーカーだった。

 圧倒的な火力と、巨躯の割に高い速力。空の上にも海の中にも、沿岸部であれば陸にも対応できる万能性は、かつて様々な戦場で帝国軍に勝利をもたらしてきた。たとえ、帝国が不利な状況に陥っていたとしても。

「かつては戦場を支配していた戦艦だ。大艦巨砲主義の産物といえば古臭く感じるが、優秀な護衛艦と相応以上の速力を持っている。しかし、もう切り札にはなりえない」

 クレイグの視線は鋭くレヴィアタンを射る。獲物を狙う獣のような目をしながら、その表情はどこまでも柔らかい。

 ジョーカー。切り札。「出せば勝ち」を実現するモノ。