Code2:HIMINGLAEVA

 喰われる──という動物的な恐怖心も、その中には当然あるのだろう。計器類で埋め尽くされ、鉄の色を残している口内を見て動物らしさは感じないが、呑みこまれることに変わりはない。

 だがしかし、なによりも──コールガのような有人機を、八機も格納してなお余りあるスペースを残したヒミングレーヴァが当たり前のように空を飛んでいることに、ひたすら驚嘆して興奮する。たとえ、現在のブラッドにとって家に等しい場所であったとしても。

「……ほんとに、ハンパないデカさだよなぁ……」

『集中してください』

 独り言に思わぬ返答があって、ブラッドは思考を切り替えてコールガの観測データを見直した。モニタ下部に表示された風向きと風速を考え、静止状態を維持するヒミングレーヴァに潜りこむ。

 照明はあるものの、空と比べれば室内の暗さは際立つ。とはいえ内壁と接触でもしてみればコールガとヒミングレーヴァ両方に影響を与えかねない。

 念のため、AIに命じてヒレ部分を本体に近づける。モニタを注視すると、口内でさらに細分化された八つあるゲートの右端で緑色のライトが点滅していた。

 注意を促す光点を目印に、ブラッドはコールガを操ってゲートを通過。専用の格納庫にコールガの本体を着底させる。ヒレはコールガの姿──キンギョ型を維持することもなく、格子状に組まれたメカニック用の足場の間にそれぞれ収まった。

 次いで、コールガの機能が停止。前面モニタが消えてコックピット内部の照明が点灯する。

『コールガの帰投を確認しました。これにて作戦行動を終了します。お疲れ様でした』