Code2:HIMINGLAEVA
アビゲイルの声を聞いて、ブラッドはようやく息をつく。飛ぶこと自体は苦ではないし、むしろ楽しんでいる方なのだが、戦闘機どころか飛行機として異質すぎる形状のコールガは扱いひとつひとつに神経を使う。気が休まらない。
シャワーでも浴びるか、それとも軽く腹に入れるか、と頭を巡らせながらコックピット上部を開放。外へ一歩踏み出そうとして、
『あ──少し待ってください』
「うん?」
コックピットの内部から通信の声が。近場の手すりに手をかけて、アビゲイルの言葉が続くのを待つ。
すぐに返答があると思われたが、わずかに間が生じる。ブラッドのことを呼んだわけではないのだろうか、と疑いかけた頃、ようやく言葉の続きが述べられた。
『コールガパイロット、ブラッド・ベイリーに通達します。すぐに司令室に向かってください』
「へ? 俺なんかした?」
『上官に呼ばれることと違反行為をすることをイコールで結ばないでください。任務の話に決まっています。……それと』
「おう」
『降りるときはきちんと通信を切ってください』
*
ヒミングレーヴァの中を歩いていると、空を飛んでいるという事実を忘れてしまいそうになることがある。
完全に反重力機構に依存した飛行をしているため、エンジン音がないというのが一つ。また、静止中であれ、移動中であれ、揺れが少ないというのが大きい。実際に歩いていても、体にわずかな圧を感じる以外は地上と変わりがなかった。