Code2:HIMINGLAEVA

 比較対象がないために巨大さを測ることは難しいが、これからコールガが着艇する母艦がそのクジラであることを考えれば、それだけで十分とも言えた。

 白いクジラは、「飛行可能な航空母艦」である。

 この機体は、飛び続けること──つまりは着陸しないことを前提として開発されている。もちろん従来の燃料や技術では実現できるはずもなく、コールガ同様に『波の乙女計画』の一環として作られたものだ。

 着陸の必要がなく、迅速な移動が可能で、多数の機体と人員を収容可能。

 となれば、飛ぶ空母というよりは、飛ぶ要塞と言った方が近いのかもしれない。機密事項の多い、最先端の技術を凝縮した『波の乙女計画』は、このクジラを中心にして進んでいる。

 Series Aegir‐Project9 HIMINGLAEVA(ヒミングレーヴァ)

 『波の乙女計画』で使われている拠点にして、同計画内で最初に作られた機体だ。

『九番ゲート、開きます』

 アビゲイルからの通信には応えず、ブラッドはヒミングレーヴァの動きを注視する。

 コールガを始め、『波の乙女計画』で作られた機体は、作戦行動中でなければヒミングレーヴァ内部──クジラとして考えると口腔に位置する格納庫に収まることになる。そのため、出入り口のゲートはヒミングレーヴァの口。コックピットの前面モニタには、大口を開けた鋼鉄製のクジラが映し出されることになる。

 自身の体がぶるりと震えるのを、ブラッドは感じていた。