Code1:KOLGA

 最新鋭の──裏を返せば実験的な機体に、彼のような年若い人間が搭乗することはかなり珍しいはずなのだが、ブラッドは気負いや不安の感情を見せていない。通常、試験機に乗るテスト・パイロットは、前線を退いたベテランが務めるものであるにも関わらず。  しかし、ブラッドは緊張の表情ならば露わにしていた。  原因は、視線の先にあるモニタと、コックピットに流れた電子音声から受け取った情報である。    周囲に友軍反応はありません_    援護可能機を検索 ******完了_    到着までの所要時間はおよそ一時間です_  音声の終了と同時、モニタの隅にポップアップしたウィンドウで六〇分のカウントダウンが始まる。  その上のカウンターは、敵機反応──三二七を示して止まっており、すぐ隣には敵機との距離が表示されている。こちらは止まることなく減少を続けていて、それに伴ってモニタ上のノイズじみた黒点が大きくなっていた。  接触までの時間は八分。  もちろん、射程範囲に入るのはそれよりも早い。  友軍から離れた場所で、敵の大部隊に遭遇する──特に言葉を尽くす必要もなく、単純明快に危険な状況だった。 「……運、ないなぁ。俺」  ため息まじりに吐き出された声は、それでもまっすぐにマイクまで届いたらしい。  電子音声と入れ替わるように、通信の声が入る。 『コールガに搭乗した際、注意事項を伝えられたはずです。単独行動中は特に注意せよ、と』