Code0:SWORDFISH

 シリーズ・エーギルのみではあるが、様々な機体に乗り続けてきたブラッドにとって、一本の操縦桿に愛着を持つことは極めてまれだ。愛着を持つよりもはやく機体は変わり、また次の最新機に乗り込むことになる。

 ソードフィッシュに乗り始めたのは、つい最近だ。しかし、この機体の操縦桿は、おそらく最期に握る操縦桿であり、最期まで握っている操縦桿だろう。

 ──操縦桿を握ったまま空で死ねるのなら、それも本望だ。

 それが、ブラッドの想いだった。「空を飛びたい」だけの欲求で空軍に入ったブラッドは、初心を忘れぬまま、少年のような想いを抱いて空を飛び続けた。ひたすら自由に、思い通りに飛びまわることを夢見て、今に至っている。地に足をつけて死ぬよりも、空で操縦桿を握って死にたい──心の底からそう言えるほどに、ブラッドはパイロットという役割を愛していた。

 ブラッドはソードフィッシュを加速させた。襲撃者に向かい、全速力で接近する。

 とうに射程内には入っている。いつ死んでもおかしくはない。それでも、ブラッドは自殺行為の自覚もなかったし、自暴自棄になったつもりもなかった。

 慌てた様子もなく、襲撃者は転回してブラッドの正面へ。

 撃っては避けられ、撃たれては避けの攻防が数秒で行われ、二機はすれ違う。再び襲撃者を視界に入れようと操縦桿を倒したブラッドだったが──そこで異変に気付いた。

 反応が悪い。速度が保てない。コックピットに流れるアラートに反応して視線を動かせば、モニタの端には機体の状態が表示されていた。