Code0:SWORDFISH

 速度を落とすことなく飛行を続けながら、さきほどまで共に編隊を組んで飛行していた部隊に目を向ける。

 残った二機は健闘しているものの、どう見てもこちら側に勝ち目はない。

 五対一という数的不利をものともせず、襲撃者はゆうゆうと二機を落としている。編隊を組んでいたのは速度・機動力を重視したソードフィッシュだったというのに、どちらも背後をとられた「完全な敗北」だ。

 それでも、ブラッドはいまだ恐ろしさを感じていない。

 ただ、驚嘆していた。

 美しく飛び、効率的に敵を殺す、自由な機体に。それを操るパイロットに。

 ──人と飛行機はここまで至れるのか、と。

 燐光。マズル・フラッシュが瞬く。二つの爆発。


 残っていた最新鋭の機体は、いともたやすく海へ墜とされた。

 襲撃者の視線が自らへ向けられているのを、ブラッドは感じる。

 他の隊員が周囲を取り囲んでいる間、襲撃者の隙をうかがおうとしていたブラッドだったが、結局彼は一発も撃つことなく最後の一人となってしまった。全ての動きがシミュレート済みなのではないかと思うくらいに、襲撃者の動きは流麗でよどみない。回避から攻撃、攻撃から回避への転換がはやい。

 勝ち目などない。しかもそれは、機体の性能差によるものではない。

 そんなことは、ブラッドも理解しているつもりだった。おそらく、襲撃者に挑んで墜ちていった四機のパイロットも同じだろう。

 信念、矜持、責任、過信。

 彼らを動かしたのは個人の信条か、あるいは戦時における教育の賜物か。ブラッドには知る由もなかったが、彼らを止めることができなかったのもまた事実だ。