Code0:SWORDFISH

──二年前。


 また一機、ブラッドの目の前で戦闘機が爆炎に包まれながら眼下の海へと落ちていった。

 この戦闘で墜落したのは、全て友軍機だ。爆発、炎上した機体は、黒い海にとけいるようにして沈んでいく。

 周囲に明かりはない。ただ、時折瞬くマズル・フラッシュと、帝国軍機特有のブーストエンジンの燐光が空を彩っていた。

 五機で編隊を組んでいた友軍機は、自機を含めても三人に減っている。

『こちらソード・ワン! 帝国機から襲撃を受けている! 数は一、だがラ・モール(死神野郎)じゃない! 援軍が必要だ!』

 部隊長の怒声が無線から垂れ流されている。

 集中力を乱されるのを感じながらも、ブラッドは通信を開いたままで機体を操っていた。

 シリーズ・エーギルにおける最新作、メカジキ型のソードフィッシュは、ある程度の速度を出さなければ飛行が安定しない曲者だ。本来ならば不完全な反重力機能を補助するためにヒレを広げて風を掴み、空を泳ぐようにして飛ぶところを、ソードフィッシュは高速機動時にヒレをたたむ。速度と機動性を重視した、不安定さの目立つ最新機だ。

 現在、ブラッドが搭乗しているソードフィッシュはすでに戦闘モードに入っており、飛行に必要なはずのヒレはおりたたまれている。一定の速度を出し続けなければバランスを崩してそのまま墜落するような、緊張を強いられるフライト。

『何? 特徴? 前進翼のイカれた設計ってだけだ! 夜に色なんざ分か──』

 得られる情報の方が少ないと判断し、ブラッドは通信を切って怒声を遮断。