驚いていないわけではない。それ以上に、こういった込み入った現象は六呂師にとって初めてではなかったというだけ。それに付きまとう労力の過多を知っているだけに、手放しで驚けないだけだった。 当夜坂凜子。 簡潔にいうと、彼女には本来あるはずのものがなかった。 彼女には、影がなかったのである。