「だから間法でもあるし、真法でもあるし、そのどちらでもない。かかってるわけだよ、『ま』が。私は、そんな魔法が社会通念上における犯罪行為に使われないよう取り締まる人間。魔法省から派遣された招待教師」

 魔法学。

 それが、水上が受け持つ担当教科である。

「私が掛けている制限は、子供程度に突破されるような脆弱な結界じゃないさ」

「じゃあ、なんで」

 魔法学の実技演習の際に開放した制限をかけ忘れたのでは? と六呂師は指摘してみたが、そういうことでもないらしかった。

 と、なると。

 子供程度、でなければ。

 扱う力がたとえば子供程度でないとするならば。

 不意に、六呂師の脳裏を一昨日前の体育館の映像がよぎる。

 血。

 血にまみれたクラスメイト。

「なるほど……転入生ね。その線があったか」

 神妙に頷きながら水上は吟味するように言う。何を納得し、何の線が浮上したのか。六呂師には分からない。ただ、次に紡がれた水上の言葉にすべてが凝縮されているように思えた。

「なあ、六呂師くん。ちょっと手を貸してくれるかい」

 六呂師はカップを口につけ、小さく傾けてコーヒーを一口飲みこんだ。

 口腔に広がる苦みを感じながら、少女は短く応じる。

「──僕でよければ」