第四章
「浅間で生まれてきた女性は……全てDNAを採取されててね。素質があると思われたら、ペスト細胞を受け入れるだけの準備が整うのを待って、問答無用で下層に連れて行かれてハイジアになる」
それは、安定してハイジアを「供給」するためのシステムだ。
ヴィオレを除いた全てのハイジアが、そういう風にして作られている。もっと貧窮していたころは、生まれてすぐの赤子を下層で引き取り、ハイジアに適した「教育」を行ったこともあるらしい。
「僕は六歳のときにそれを知った。妹と約束したんだ。科学者になって会いに行くって。でも、僕が一七歳のときに妹は死んだ」
「じゃあ、なんでブランの死を無駄にしたの」
「……」
「こんな使えない念動力のために、あなたの妹は死んだの!?」
八つ当たりのように、言葉を叩きつける。
戸惑いと悲しさと同情と共に、怒りもその強さを増していく。
対照的に、御堂の表情は少し苦しげではあっても穏やかなものだった。ヴィオレはそれが気に食わない。さらに手をこちらへ差し伸べてくるものだから、いっそのこと手を離してしまおうかとも思い始めた。
しかし、まだ答えを聞いていない。落とす代わりに念動力で壁を作り、頬に触れようとした御堂の手を明確に拒絶する。
「僕は君に、人として幸せになってほしかった」
「……私をハイジアにしたあなたが、それを言うの?」
「だから、だよ」
御堂は右手を離そうとしない。
念動力でできた透明な壁に触れたまま、続ける。